低酸素脳症とは
低酸素脳症とは、脳への充分な酸素供給ができなくなることにより脳がダメージを受けた結果、引き起こされる様々な症状や障害のことを指します。
低酸素脳症につながる主な原因としては2つあり、一つは循環器(血液)の問題、もう一つは呼吸不全などの酸素低下による問題です。
血液は全身に酸素を運ぶ役割をしていますから、心臓が停止したり血圧が低下したりして脳に血流がいかなくなると充分な酸素が行きわたらず、脳に障害が出現してしまうことがあります。また、呼吸停止や窒息などによって酸素そのものが体内に取り込まれない場合も脳細胞にダメージが残ってしまいます。
脳細胞が再生するかしないかは現段階では様々な議論や研究がなされていますが、多くの医療関係者により脳の中の神経細胞は再生しないと言われており、実際に脳細胞にダメージを受けると身体機能に大きな影響を及ぼします。
低酸素脳症の例
低酸素脳症の一つの例として取り上げられるのは脳性麻痺です。脳性麻痺は病名ではなく、様々な原因によって引き起こされる症状を指す用語です。
脳性麻痺は、胎生期から生後4週間以内に脳細胞が損傷を受けることによって運動機能の障害を起こす症候群です。(運動機能の障害以外にも、呼吸や知能に障害を引き起こす場合もあります。)脳性麻痺の原因としては胎児期の脳の形成不全や分娩中の酸素欠乏、感染症など様々な問題がありますので、低酸素脳症だけが脳性麻痺を引き起こすわけではありませんが、低酸素脳症が脳性麻痺の原因となることはあります。
また、心筋梗塞などが引き起こす心室細動によって心臓が血液を送り出せなくなり低酸素脳症に至る場合もあります。それまで心臓に病気がなかったという人でも、突然意識を失い、呼吸や脈が止まることがあるため誰もが陥る可能性のある病気です。
心室細動から低酸素脳症に至るのを防ぐためには一刻も早い処置が大切です。AEDや心臓マッサージで血液を脳に送ることで、低酸素脳症を回避できる可能性があります。
低酸素脳症で受け取れる障害年金の受給要件は?
障害年金の受給資格について
前提として、障害年金が受給できる要件についておさらいしておきましょう。
障害年金には大きく分けて2つあり、国民年金から支給される「障害基礎年金」、厚生年金から支給される「障害厚生年金」があります。国民年金は20歳以上60歳未満のすべての国民が加入しています。厚生年金は会社員や公務員の方が加入しています。厚生年金に加入している方は国民年金にもダブルで加入しているので、手厚い保障が受けられます。
障害基礎年金の受給要件は3つです。
・初診日が国民年金加入中であること。もしくは年金に加入できない20歳前/60歳以上65歳未満であること(日本在住)
・障害認定日における障害の状態が、障害等級表に定める1級もしくは2級に該当していること。
・初診日の前日の時点で保険料の納付要件を満たしていること。
生まれつきの障害でも障害年金の対象となる
そもそも年金が受けられるのは、保険料を納めている人です。ただし、先天性の病気や障害のある方や、20歳になる前に障害が認められている場合は、保険料を納めていなくても障害年金の対象となります。
障害年金の受給要件においては、初診日及び障害認定日が大切な基準となります。
・初診日より前に適切に国民年金に加入し、保険料を支払っていること
・障害が認定されること(障害基礎年金の場合は障害等級表の1級/2級に該当すること)
が基本的な受給要件となります。生まれつきの障害をお持ちの方や、20歳より前に障害の残る傷病を患った場合は20歳になった日が障害認定日となります。(この場合は本人が一切保険料を納付していなくても障害年金の対象となります。)低酸素脳症の場合、お子さんが対象となる場合もあるので早めにプロの相談を受けることをお勧めします。
初診日や障害認定日が大切な理由は、もう一つあります。うっかり年金の請求を忘れていたり、請求できることを知らなかった場合にも遡って請求できることがあるからです。その際には症状や診断を証明できる資料が非常に大切になります。
日頃から病院にかかったら、領収書や診断書などを保存しておくと良いでしょう。
障害年金の認定要件
障害基礎年金が受給できる障害の程度は、次のように定められています。
・障害の程度1級
他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできないほどの障害の状態です。身のまわりのことはかろうじてできるものの、それ以上の活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅介護を必要とし、活動の範囲がベッドの周辺に限られるような方が、障害等級1級に相当します。
・障害の程度2級
必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活は極めて困難で、労働によって収入を得ることができないほどの障害です。例えば、家庭内で軽食をつくるなどの軽い活動はできても、それ以上重い活動はできない方(または行うことを制限されている方)、入院や在宅で、活動の範囲が病院内・家屋内に限られるような方が障害等級2級に相当します。
(日本年金機構サイトより抜粋)
障害基礎年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構 (nenkin.go.jp)
上記の状態に陥り、働くことはおろか日常生活にかなりの支障をきたしている場合には障害年金が認定される可能性が高くなります。
ただ、低酸素脳症についての具体的な基準は明らかにされていないため、認定を受けるためには早めにプロにご相談ください。
低酸素脳症で障害厚生年金1級を受給した事例
当センターにおいて低酸素脳症で障害年金を受給した事例をご紹介致します。
この事例に限らず、低酸素脳症で障害年金を受給できる可能性は多くございます。
お困りになられている場合は、まずはご相談からお気軽にお問い合わせください。
概要
40代/男性
症名:低酸素脳症
結果:障害厚生年金1級
ご依頼いただいた方の状況
認定時のTさんは45歳です。
Tさんが43歳の時、職場で作業車を運転中に突然気分が悪くなったため、オフィスにいた上司に電話連絡しました。連絡後直ぐに上司が現場に駆け付けましたが、既に本人は意識がない状態であり救急要請となりました。
その後、救急車内で心肺停止状態となり救急搬送されました。救急搬送後は、主治医から「低酸素脳症」と診断され心拍再開はしたものの意識が回復せず入院治療となり、気管切開による人工呼吸器管理及び経管栄養を行いながら治療に努めております。しかしながら、その後も症状は改善されず、本人は全く意識を回復しておらず主治医からも意識回復の可能性は低いと言われております。
治療期間が長引くにつれて治療費の負担が増えてきたため、実兄が何か救済制度はないかと思っていたところ、ポストに入っていた障害年金の無料説明会のチラシを見て、障害年金を受給できるのではないかと思い多摩・八王子障害年金相談センターに問い合わせをしました。
受任から受給までの道のり
ご家族と面談しヒヤリングした結果、病院にて気管切開による人工呼吸器管理及び経管栄養を行いながら治療に努めているものの症状は全く改善されず、本人は意識を回復していないため治療は難航している状況が認められました。
主治医も遷延性意識障害(せんえんせいいしきしょうがい…いわゆる昏睡状態のこと)を認めていることから日常生活に大きく支障をきたしているものと判断できたため障害年金の受給できる可能性がある旨を伝え、書類を揃えて申請した結果、障害厚生年金1級を受給するに至りました。
低酸素脳症の障害年金を受給する時の注意点
上記の事例で大切なことは、日常生活においてほぼ寝たきりの状態であり、それを医師も認めている点です。低酸素脳症に限らずこれらのポイントの客観的な立証と迅速な書類申請が障害年金の受給には大きく関わってまいります。
低酸素脳症は脳にダメージが発生することも多いため、本人と意思の疎通が取れず、ご家族がお手続きを取られることも少なくありません。
そのような際にどんな書類が必要か、どんな手続きを行っていくかはその後障害年金を受給するうえで大切なポイントとなってきます。
ぜひ、手続きの煩雑さやサービスの内容についてご心配な点があれば、当センターまでお気軽にご相談ください。
まとめ
低酸素脳症は耳慣れない言葉かもしれませんが、脳がダメージを受けるとても重大な症状です。心筋梗塞などによって低酸素脳症に陥り、突然働けなくなるという方もいらっしゃいます。障害年金は病気と戦い治療を続ける患者さんやご家族のご苦労やご不安を少しでも軽くできるように用意された制度です。ぜひ自己判断されることなく、利用に向けてまずはご相談いただけましたら幸いです。
小野 勝俊
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