人工肛門・人工膀胱(ストーマ)・新膀胱で障害年金の受給はできる?受給要件や事例など徹底解説!

人工肛門とは?

人工肛門(ストーマ)とは、腹部に穴を開け、腸の一部をお腹の外に出して便の出口としたものです。

主に癌や腸閉塞などの病気のために腸を切除した人が人工肛門を造設します。自然肛門をがんと一緒に切除した場合には、永久的人工肛門となります。一方で、潰瘍性大腸炎やクローン病など、腸の炎症が続いている場合に腸を休ませる手立てとして人工肛門を造設することがあります(一時的人工肛門)。一時的に腸をやすませたあとは、再手術により元どおり自然排便することが可能です。

人工肛門には痛点がありませんので痛みを感じることはありません。また常に粘液が分泌されているため腐敗や乾燥することもありません。

しかし人工肛門からは便やガスが常に排出されるため、バッグを皮膚に貼り付けてバッグ内に便を排出させる必要があります。バッグに便がたまったら捨てます。
皮膚保護剤とバッグは1〜7日で交換が必要です。

人工膀胱とは?

人工膀胱というのは人工肛門と同じように尿管を直接おなかの外に出したものです。人工肛門や人工膀胱のことを「ストーマ」と呼ぶこともあります。人工肛門と同じように人工膀胱も体外にバッグを貼り付け、バッグ内に尿が排出されます。

人工肛門も人工膀胱も、癌などの病気で腸や膀胱を摘出せざるを得なくなった方々のための人工的な排出手段です。人工肛門や人工膀胱を「ストーマ」と呼び、ストーマを装着する人のことを「オストメイト」と呼びます。

ストーマは1〜7日で交換が必要となり、費用面でも手間の面でも日常生活に少なからず影響を与えます。

新膀胱とは?

新膀胱というのは、膀胱癌などで膀胱を全摘出してしまった場合に、小腸の一部を利用するなどして尿をためる袋を新しく体内に造設したものです。人工膀胱と新膀胱の違いは、人工膀胱は尿管をお腹の外に出すため排出バッグの装着が必要となる一方で、新膀胱は体内で尿管と結合させるため自然排尿が可能となる点です。

新膀胱の造設手術は人工肛門の造設と重複して行われる可能性があり、それぞれの場合によって障害年金の認定等級が変わる可能性があります。

人工肛門・人工膀胱(ストーマ)で障害年金は受給できるか?

人工肛門・人工膀胱(ストーマ)は尿や便を排出するバッグを体外に装着するため、交換やメンテナンスが欠かせません。交換するための費用や手間の面でも日常生活に制限がかかります。

そんなオストメイトの生活をサポートするのが障害年金です。結論から言うと、人工肛門・新膀胱・人工膀胱では場合によって障害年金の受給が可能です。

・人工肛門…障害年金の3級に該当(場合によっては2級)
・新膀胱…障害年金の3級に該当(場合によっては2級)
・人工膀胱…尿路変更術を行っていれば障害年金の3級に該当

人工肛門や新膀胱の造設は障害年金の3級に該当します。障害年金には基礎年金と厚生年金がありますが、障害基礎年金は認定基準が2級以上しかないため、3級は自動的に障害厚生年金からの支給となります。

一方で、人工膀胱そのものについては障害年金には言及がありません。

ただ、尿路変更術を行っていれば障害年金の3級に該当します。

尿路変更術というのは膀胱癌などによる膀胱摘出に伴い、尿路を再建する手術です。尿路変更術には大きく分けてストーマ(腹部からの体外排出口)を造設するものと、肛門や尿道から排出できるように尿路を作るものがあります。

膀胱の摘出などによって人工膀胱が必要になった場合、ほとんどの場合は尿路変更術を行う必要があるため、尿路変更術においての障害年金の受給を検討しましょう。

なお、人工膀胱は障害年金とは別に身体障害者手帳の4級に該当するため、税金面での優遇、医療費助成、公共交通機関での割引などを受けることができます。(詳しくは身体障害者手帳でお調べください)

次の章では、実際に障害年金を受給するための受給要件について解説していきます。

人工肛門・人工膀胱(ストーマ)の認定基準とは?

人工肛門や新膀胱についての障害認定基準は、日本年金機構の「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」の第18節「その他の疾患による障害」に定められています。

基本的な認定基準としては、ほかの障害と同じように以下のように定められています。

認定基準

その他の疾患による障害については、次のとおりである。

1級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

その他の疾患による障害の程度は、全身状態、栄養状態、年齢、術後の経過、予後、 原疾患の性質、進行状況等、具体的な日常生活状況等を考慮し、総合的に認定するものとし、身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状があり、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。 

❇︎「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」第18節「その他の疾患による障害」
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/shougainenkin/ninteikijun/20140604.files/3-1-18.pdf

障害認定基準を読むと少し表現が難しいですね。1級の「日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度」とは「他人の介助なしにはほとんど自分のことができない」という意味です。病院内の生活で言えば活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるものであり、家庭内の生活で言えば活動の範囲がおおむね就床室内に限られるものです。つまり、ベッドや家の中で安静にしているかゆっくりと静かな動作しかできない状態のことを指しています。2級の基準にある「日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度」というのも、多少身の回りのことができる程度であって、労働はできない状態を意味しています。人工肛門や新膀胱についての具体的な障害の認定は、以下のように認定基準が定められています。

人工肛門または新膀胱を造設したものもしくは尿路変更術を施した場合

・人工肛門を造設したもの
・新膀胱を増設したもの
・尿路変更術を施したもの

上記は障害年金(障害厚生年金)の3級に該当します。
なお、全身状態、術後の経過、予後、元疾患の性質、進行状況などによって総合的に状態が悪いと判断されたときはさらに上位等級に認定されます。

人工肛門を造設し、かつ新膀胱を造設または尿路変更術を施した場合

・人工肛門を造設し、かつ新膀胱を造設、または尿路変更術を施したもの

つまり、

・人工肛門 + 新膀胱
・人工肛門 + 尿路変更術

を施したものということです。
上記は障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)2級に該当します。

人工肛門を造設し、かつ完全排尿障害状態にある場合

・人工肛門を造設し、かつ完全排尿障害(カテーテル留置または自己導尿の常時施工を必要とする)状態にある場もの

上記は障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)2級に該当します。

人工肛門·新膀胱(ストーマ)での障害年金の申請方法は?

人工肛門や新膀胱を造設した場合の障害の程度を認定する時期(いつの状態で障害認定するか)は次のように定められています。

・人工肛門を造設した場合
…手術を行った日から起算して6ヶ月経過した日
(❇︎初診日から起算して1年6月を超える場合を除く)

・尿路変更術を行った場合
…手術を行った日から起算して6ヶ月経過した日
(❇︎初診日から起算して1年6月を超える場合を除く)

人工肛門を造設し、かつ新膀胱を造設した場合
…人工肛門を造設した日から起算して6ヶ月を経過した日または新膀胱を造設した日のいずれか遅い日(初診日から起算して1年6ヶ月を超える場合を除く)

人工肛門を造設し、かつ尿路変更術を施した場合
…人工肛門の造設や尿路変更術を行なった場合のいずれか遅い日から起算して6ヶ月を経過した日(初診日から起算して1年6ヶ月を超える場合を除く)

人工肛門を造設し、かつ完全排尿障害状態にある場合
…人工肛門を造設した日または完全排尿障害状態に至った日のいずれか遅い日から起算して6ヶ月を経過した日(初診日から起算して1年6ヶ月を超える場合を除く)

申請のためには初診日や医師の診断書が必要ですので、病院からもらった領収書や診断書はなるべく保存しておくことがポイントです。また、認定までには複雑な手続きや資料の作成が必要となりますので、お困りの際は早めにプロにご相談ください。

直腸がんによる機能障害(人工肛門造設術)で障害年金3級を受給した事例

32歳で直腸癌と診断された男性の事例です。
直腸から肝臓への転移が認められ、腹腔鏡手術を行いました。癌の進行はおさまったものの休職を余儀なくされ、総合的な判断の結果障害年金3級を受給するに至りました。

https://tamasapo-office.com/post-2156/

人工肛門·人工膀胱(ストーマ)・新膀胱で障害年金を受給する時の注意点

直腸癌・前立腺癌・膀胱癌など、泌尿器系/消化器系のがんで人工肛門や人工膀胱をつける必要があるとき、尿路変更術や新膀胱の造設手術を受ける必要がある時は、手術法や全身の状態によって障害認定の等級に変化があります。

必要な手術やストーマの有無をしっかりと把握した上で障害年金の請求の手続きを進めることが大切です。

自分の症状がどれにあてはまるかよくわからない、年金がもらえるか不安だ、手続きが面倒だ…など、お困りごとがある場合は、お早めに多摩八王子障害年金センターまでご相談ください。

まとめ

いかがでしたでしょうか。人工肛門や人工膀胱、新膀胱を造設した際の障害年金の受給の有無や等級の認定には、いろいろなケースがあることがお分かりいただけたかと思います。まずはお気軽に、お早めに、私たちのようなプロにご依頼ください。お客様の傷病やお困りごとに寄り添って、受給のお手伝いをさせていただきます。

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小野 勝俊

初めまして、多摩・八王子障害年金相談センターを運営する「多摩ヒューマンサポート社会保険労務士事務所」の代表 小野勝俊と申します。 当事務所に相談することで、お客様の悩みが少しでも解決するよう私が精一杯サポート致します。 障害年金を受給し、新しい未来が築くことができるように一緒に頑張っていきましょう。