心疾患とは?
心疾患は心臓の疾患を含む、循環器系の疾患のことです。心臓は全身に血液を送り出す重要な役割を果たしていますから、心疾患になると仕事はおろか日常生活にも支障をきたすことが少なくありません。そんな心疾患にかかってしまったときの生活をサポートする手立てとして、障害年金を受給できる場合があります。ここでは、障害年金のうち、心疾患系の病気で受給できる障害年金について詳しくお伝えしてまいります。
障害年金の受給資格について
前提として、障害年金が受給できる要件についておさらいしておきましょう。
障害年金には大きく分けて2つあり、国民年金から支給される「障害基礎年金」、厚生年金から支給される「障害厚生年金」があります。国民年金は20歳以上60歳未満のすべての国民が加入しています。厚生年金は会社員や公務員の方が加入しています。厚生年金に加入している方は国民年金にもダブルで加入しているので、手厚い保障が受けられます。
障害基礎年金の受給要件は3つです。
・初診日が国民年金加入中であること。もしくは年金に加入できない20歳前/60歳以上65歳未満であること(日本在住)
・障害認定日における障害の状態が、障害等級表に定める1級もしくは2級に該当していること。
・初診日の前日の時点で保険料の納付要件を満たしていること。
初診日において保険料納付が適切に行われていることが大切
そもそも年金が受けられるのは、きちんと保険料を納めている人だけです。障害年金の受給要件においては、初診日・障害認定日が大切な基準となります。初診日より前に適切に国民年金に加入し、保険料を支払っていることと、障害が認定されること(障害基礎年金の場合は障害等級表の1級もしくは2級に該当すること)が基本的な受給要件となります。生まれつきの障害をお持ちの方や、20歳より前に障害の残る傷病を患った場合は20歳になった日が障害認定日となります。(この場合は本人が一切保険料を納付していなくても障害年金の対象となります。)
初診日や障害認定日が大切な理由は、もうひとつあります。うっかり年金の請求を忘れていたり、請求できることを知らなかった場合にも遡って請求できることがあるからです。その際には症状や診断を証明できる資料が非常に大切になります。
日頃から病院にかかったら、領収書や診断書などを保存しておくと良いでしょう。
心疾患の認定基準について
障害基礎年金における障害年金の受給要件は、障害等級表の1級もしくは2級に該当することです(障害厚生年金では3級でも支給されます)。ここでは、心臓疾患の障害状態要件とはどのようなものかを詳しくご説明します。
障害等級の認定基準と主な心疾患の症例
心疾患には、狭心症、心筋梗塞、僧帽弁閉鎖不全症、慢性虚血性心疾患など様々なものがあります。このそれぞれについて、実際にどのような障害が発生しているかを医師が見ていきます。
そもそも障害等級表に定める1級もしくは2級に該当する障害というのは、日常生活において極端に行動の範囲が限られている状態、もしくは止められている状態を指します。1級は他人の介助を必要とする状態で、ベッドや家の中で安静にしているか、ゆっくりと静かな動作しかできない状態。2級であってもわずかな身の回りのことができる程度で、とても労働なんてできないという状態です。この状態であるかどうかは、病状や検査数値などから医師が判断するため、誰しもが当てはまる明確な基準がありません。
心疾患の場合は呼吸困難やチアノーゼ、心悸亢進(圧迫感のある動悸)などの顕著な症状を基準として、むくみや尿量減少など他の臨床症状と総合的に判断しながら障害の等級を定めます。
心疾患における障害年金の認定要領
心疾患と一口に言っても、血管を含む循環器疾患の多くが心疾患に含まれます。心疾患障害は大きく分けて、①弁疾患・②心筋疾患・③虚血性心疾患(心筋梗塞・狭心症)・④難治性不整脈・⑤大動脈疾患・⑥先天性心疾患に区分されます。この6つについて、認定基準を一定にするために詳細な基準が定められていますが、分かりやすく言うと以下のような方針で定められています。
心臓が止まり、体への血液供給がストップすることを最悪の状態として考えたときに、それに近い、もしくはその状態に近づいているような症状が認められると障害の認定がなされます。具体的には、呼吸困難、チアノーゼ、倦怠感やむくみ、尿量の減少などの諸症状です。
症状には自覚症状と他覚所見がありますが、他覚所見は医師が臨床状態や胸部X線、心電図、心エコーなどといったさまざまな診断数値から客観的に判断したものです。他覚所見を自覚症状とつぶさに連動させて、心疾患の状態を詳細に見定めます。
心疾患の障害年金でもらえる金額はいくら?
心疾患で障害認定されると、労働および日常生活がかなり制限されてしまいます。そのような状態をサポートするために障害年金が設けられていますので、万が一障害認定された場合には、しっかりと保険請求を行っていきましょう。
心疾患における障害「基礎」年金額
障害年金には障害基礎年金と障害厚生年金がありますので、ご自身が入っている年金に合わせて保険請求を行うことができます。(一般的に20歳以上の日本国民は基礎年金に全員加入しています。公務員や会社員の方はさらに厚生年金にも加入しています。)
心疾患で給付される障害基礎年金額は以下の通りです。(令和4年4月時点)
障害等級1級の場合 …972,250円(月額 81,020円)+ 子の加算
障害等級2級の場合 …777,800円(月額 64,816円)+ 子の加算
「子の加算」というのは、受給者に高校生以下の子供がいる場合に加算手当てがつくという意味です。
1人目・2人目の子 …1人につき、223,800円(月額 18,650円)
3人目以降の子 …1人につき、74,600円(月額 6,217円)
心疾患における障害「厚生」年金額
厚生年金では、障害等級が3級の場合にも支給があります。3級は、日常生活にはほとんど支障はないけれども、労働については著しい制限を受ける場合に該当します。受給できる年金額を調べて過不足なく受給しましょう。
はじめに調べておくといい数字
・標準報酬月額(各都道府県が出している保険料額表に自分の報酬を当てはめる)
・保険に加入している月数
心疾患で給付される障害厚生年金額は以下の通りです。(令和4年4月時点)
障害等級1級の場合
(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(223,800円)〕
障害等級2級の場合
(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(223,800円)〕
障害等級3級の場合
(報酬比例の年金額) 最低保障額 583,400円※
※その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。
報酬比例部分の計算において、厚生年金加入期間が300月(25年)未満の場合は、厚生年金加入期間を300月とみなして最低保障額の583,400円が支給されます。
また、障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金の計算の基礎とはされません。
「報酬比例の年金額(報酬比例部分)」というのは、年金の加入期間やその人の年収などに応じて産出される、ベースとなる金額です。
少しややこしいのが、報酬比例部分は平成15年3月以前と4月以降で計算式が異なるので、それぞれ計算して足し合わせなければいけません。
計算式は以下の通りです。
【平成15年3月以前の計算式】
平均標準報酬月額×(7.125÷1000)× 加入期間の月数
【平成15年4月以降の計算式】
平均標準報酬月額×(5.481÷1000)× 加入期間の月数
※平均標準報酬月額…「被保険者であった期間の標準報酬月額の合計」を「被保険者であった期間の月数」で割った額
※標準報酬月額…雇用主から支払われる毎月の給料を額ごとに区分したもの。
(各都道府県ごとの保険料額表を参照)
例)報酬月額250,000円の場合…標準報酬月額は16等級の240,000円
かなり複雑な計算式でよくわからないと思われる方も多いことでしょう。ご不安な時はお気軽にご相談ください。
心疾患の障害年金受給事例をご紹介
実際に心疾患を抱えてしまったとき、どんな流れで受給に至るのでしょうか。ここでは心室細動で障害厚生年金3級を受給した40代男性の例をご紹介いたします。
実際に病に倒れると、まずは救命や治療でかかりっきりになります。その次に仕事や家族のことを整理するのが一般的。障害年金の受給手続きは、すべてが落ち着いた後ということも非常に多いです。その際、今までの通院歴や診察内容が初診日や等級の認定に大きく作用することもあります。病気になられた際は、通院歴や診断結果がわかる記録をこまめに残しておくことが大切です。
https://tamasapo-office.com/post-30/post-1757/
心疾患の人工弁は障害年金の対象になるの?
人工弁を心臓に装着すると障害年金3級に認定され、障害年金の対象となります。
人工弁を装着する手術は、人工弁置換術と呼ばれ、変形したり硬くなったりして動きの悪くなった心臓の弁を人工の弁に置き換える手術です。僧帽弁狭窄症・大動脈弁狭窄症・大動脈弁閉鎖不全症で行われることが多いです。
人工弁の認定基準について
人工弁を装着すると、障害年金3級の認定を受けられます。それ以外にも1級や2級に該当する所見や症状がある場合には相応の認定がされることがあります。
人工弁の障害年金でもらえる金額はいくら?
人工弁を装着した際に受給できる障害年金は、心疾患で障害年金を受給する金額と同じです。ただし、人工弁を装着すると障害年金3級以上に該当します。
人工弁の障害年金受給事例をご紹介
人工弁手術が必要となったとき、どんな流れで受給に至るのでしょうか。ここでは感染性内膜炎で人工弁置換手術を行い、障害厚生年金3級を受給した30代男性の例をご紹介いたします。
https://tamasapo-office.com/post-30/post-2363/
心疾患・人工弁で障害年金を申請する際の注意点
心疾患は日本人が抱える三大疾病のうちのひとつであり、身近でありながら非常に怖い病気です。誰もがそのリスクを抱えているからこそ、いざというときには年金というサポートがあることを知っておくと心強いですね。
もともと心臓に持病のある方であればまだしも、突然倒れてしまうこともある病気ですから備えといっても何をすればいいかわからない方も多いでしょう。
保険請求で大切なことは、いつからその病気になったか、どれくらい症状が重いかを証明する必要があると知っておくことです。病院で診察を受けたら、日時と症状がわかるものをこまめに保存しておきましょう。遡って請求できるかできないかで受給額に大きな差が生まれることもあります。
わからないことはお近くの年金事務所や障害年金の専門家がいる多摩・八王子 障害年金相談センターまでご相談ください。
小野 勝俊
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