がんで障害年金は受給できる?~必要な条件や注意点について~

がんで障害年金は受給できる?条件や注意点について徹底解説!受給事例も!

障害年金とは?

障害年金とは、病気やケガで生活が困難になった方へ国が用意しているサポート制度です。具体的には、安心して医療にかかり、生活ができるように国が費用面の支援をします。もちろん無制限に支援が受けられるわけではなく様々な条件がありますが、不慮の事故や突然の病気に見舞われた際も、高額な医療費や入院費の一部を国が支援してくれる大変高度な社会保障システムです。

アメリカでは日本とは医療制度が大きく異なり、医療費は地域や病院によって大きく異なります。病院同士が医療技術を競い合うので、技術も高いですが費用も高額です。そのため医療費が払えず自己破産に陥る人もいます。
国ごとの事情が異なることや財源の問題もあるため一概に比較することはできませんが、病気やけがに見舞われた際も費用の支援を受けられ、安心して生活できるのは日本の障害年金制度の利点といえます。

がんで障害年金をもらうための条件とは?

がん患者さんのための障害年金認定基準

日本年金機構サイトの「国民年金・厚生年金保険 障害認定基準」のページに最新版が載っています。2022年4月1日更新の「第16節/悪性新生物による障害」のページを確認すると、ガンになった際の障害年金の認定基準を確認することができます。



—(以下抜粋)—

1 認定基準

悪性新生物による障害については、次のとおりである。

1級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの
2級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの
3級身体の機能に、労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの

悪性新生物による障害の程度は、組織所見とその悪性度、一般検査及び特殊検査、画像検査等の検査成績、転移の有無、病状の経過と治療効果等を参考にして、具体的な日常生活状況等により、総合的に認定するものとし、当該疾病の認定の時期以後少なくとも1年以上の療養を必要とするものであって、長期にわたる安静を必要とする病状が、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のものを1級に、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のものを2級に、また、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のものを3級に該当するものと認定する。

障害年金の制度|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

—(抜粋ここまで)—

上記がガンになった際の障害年金の認定基準です。
「日常生活の用を弁ずる」など、難しい表現が多いですね。日常生活の用を弁ずるとはつまり、「日常生活をする」「日常の用を足せる」という意味です。トイレに行ったり、お風呂に入ったり、食事をしたりというような生きるために必要な用を足せるかどうか。これが障害年金の一つの認定基準です。

1~3級までの認定基準を簡単に解説すると、がんと診断されてから少なくとも1年以上の療養を必要としていて、なおかつ日常生活がまったくできずに常にベッドに寝ていて介助を必要とする状態を1級、ベッドからは少し起きられるが日常生活がほとんどできずにしばしば支援を必要とする場合を2級、日常生活はできるけれども働けないか労働に制限ができてしまう状態を3級と認定すると言うことです。
しかしこれらに一定の基準があるわけではなく、様々な医師の診療や治療の結果、個々の場合に応じて総合的に認定しますと書いてあります。つまり医師の判断が障害年金の受給決定に大きくかかわっているわけです。
しかし医師たちは治療に専念しているわけですから、障害年金の受給に対して積極的に協力してくれるわけではありません。そのため障害年金の受給を希望する際は、医師としっかりコミュニケーションを取って、受給に必要な条件をしっかりと確認することが大切です。

障害年金はいくらもらえる?支給される金額について

障害年金の支給額は、障害の程度や扶養家族の有無によって決まります。さらに、その人が加入していた年金の種類によっても受給額が異なります。
基本的に年金は、国民年金と厚生年金の2種類があります。この両方に加入している人もいれば、国民年金だけに加入している場合もあり、ご自身がどの年金に加入しているのかは確認が必要です。

一般的に20~60歳の全国民が国民年金に加入しています。さらに、公務員や会社に務めているサラリーマンは厚生年金にも加入しています。といっても両方を別々に支払わなければいけないわけではなく、お給料から天引きされている厚生年金保険料の中に、国民年金保険料も含まれていることになります。

ご自身が加入している年金の種類が2種類(国民年金+厚生年金)であれば、2種類の年金(障害基礎年金+障害厚生年金)が受給できるということです。

まずは国民年金から支給される障害基礎年金についてご説明します。
障害基礎年金の受給要件の詳細は以下の通りですが、簡単に言えば年金の保険料を通常通り支払っていて年金の加入期間に障害認定されていることが受給要件です。

国民年金の加入で受給できる障害基礎年金の支給額


—(以下抜粋)—

障害基礎年金の受給要件

次の1から3のすべての要件を満たしているときは、障害基礎年金が支給されます。

  1. 障害の原因となった病気やけがの初診日が次のいずれかの間にあること。
    ・国民年金加入期間
    ・20歳前または日本国内に住んでいる60歳以上65歳未満で年金制度に加入していない期間
  2. 障害の状態が、障害認定日(障害認定日以後に20歳に達したときは、20歳に達した日)に、障害等級表に定める1級または2級に該当していること。

初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。
ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。
また、20歳前の年金制度に加入していない期間に初診日がある場合は、納付要件は不要です。

障害年金の制度|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

—(抜粋ここまで)—

ご自身の加入状況を確認したら、あとは認定された障害の等級に従って障害基礎年金が支給されます。障害基礎年金の年金額は以下の通りです。支給額は毎年見直されますので確認が必要です。


—(以下抜粋)—

障害基礎年金の年金額(令和5年4月分から)

1級

67歳以下の方(昭和31年4月2日以後生まれ)993,750円 + 子の加算額※
68歳以上の方(昭和31年4月1日以前生まれ)990,750円 + 子の加算額※

2級

67歳以下の方(昭和31年4月2日以後生まれ)795,000円 + 子の加算額※
68歳以上の方(昭和31年4月1日以前生まれ)792,600円 + 子の加算額※

子の加算額

2人まで1人につき 228,700円
3人目以降1人につき 76,200円

※子の加算額はその方に生計を維持されている子がいるときに加算されます。

なお、子とは18歳になった後の最初の3月31日までの子、または20歳未満で障害等級1級または2級の状態にある子です。

障害年金の制度|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

—(抜粋ここまで)—

上記をご覧いただくとお分かりいただけるように、3級は障害基礎年金の支給はありません。厚生年金に加入している方のみ、障害厚生年金が受給できます。

厚生年金の加入で受給できる障害厚生年金の支給額

厚生年金に加入しておられた方は、障害基礎年金のほかに、障害厚生年金も受給できます。障害厚生年金の受給要件の詳細は以下の通りですが、簡単に言えば年金の保険料を通常通り支払っていて年金の加入期間に障害認定されていることが受給要件です。


—(以下抜粋)—

障害厚生年金の受給要件

次の1~3のすべての要件を満たしているときは障害厚生年金が支給されます。

  1. 厚生年金保険の被保険者である間に、障害の原因となった病気やけがの初診日があること。
  2. 障害の状態が、障害認定日に、障害等級表に定める1級から3級のいずれかに該当していること。ただし、障害認定日に障害の状態が軽くても、その後重くなったときは、障害厚生年金を受け取ることができる場合があります。
  3. 初診日の前日に、初診日がある月の前々月までの被保険者期間で、国民年金の保険料納付済期間(厚生年金保険の被保険者期間、共済組合の組合員期間を含む)と保険料免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。
    ただし、初診日が令和8年4月1日前にあるときは、初診日において65歳未満であれば、初診日の前日において、初診日がある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がなければよいことになっています。

障害厚生年金の年金額(令和5年4月分から)

【1級】
(報酬比例の年金額) × 1.25 + 〔配偶者の加給年金額(228,700円)〕※

【2級】
(報酬比例の年金額) + 〔配偶者の加給年金額(228,700円)〕※

【3級】
(報酬比例の年金額)

67歳以下の方
(昭和31年4月2日以後生まれ)
596,300 円
68歳以上の方(昭和31年4月1日以前生まれ)594,500 円

※その方に生計を維持されている65歳未満の配偶者がいるときに加算されます。
報酬比例部分の計算において、厚生年金期間が300月(25年)未満の場合は、300月とみなして計算します。
また、障害認定日の属する月後の被保険者期間は、年金の計算の基礎とはされません。

障害厚生年金の受給要件・請求時期・年金額|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

—(抜粋ここまで)—

等級を左右する「一般状態区分表」とは?

障害認定に3つの等級があることは前々章でお伝えしましたが、具体的に日常生活においてなにがどのくらいできないのかということが曖昧でわかりにくいのが実情です。そこでがんにおいては医師の診断書において、「一般状態区分表」という共通の認定基準を用います。5段階の判定になっており、この判定によって障害の認定等級が決まります。

区分一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を受けることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

障害年金の制度|日本年金機構 (nenkin.go.jp)

上記を医師によって判定したうえで、等級は以下のように決められます。

1級 : 一般状態区分「」に該当
2級 : 一般状態区分「」~「」に該当
3級 : 一般状態区分「」~「」に該当

なお、一般状態区分だけで等級認定されるわけではなく、その他の疾患や労働状況など総合的な判断によって等級が決まります。

「一般状態区分表」によく似たPS(Performance status)とは?

一般状態区分表によく似たもので、PS(ピーエス/パフォーマンスステータス)というものがあります。これは医師がよく使うもので、ECOG(イーコグ)というアメリカの腫瘍学の団体が定めた、患者さんの日常生活の制限具合を表す視標です。これを日本語に直したものが日本臨床腫瘍研究グループJCOG(ジェーコグ)から出されています。これをもとに医師たちが患者さんが今どのレベルにあるかを認定しています。

ECOGのPerformance Status

0まったく問題なく活動できる。発症前と同じ日常生活が制限なく行える。
1肉体的に激しい活動は制限されるが、歩行可能で、軽作業や座っての作業は行うことができる。例:軽い家事、事務作業
2歩行可能で、自分の身のまわりのことはすべて可能だが、作業はできない。日中の50%以上はベッド外で過ごす。
3限られた自分の身のまわりのことしかできない。日中の50%以上をベッドか椅子で過ごす。
4まったく動けない。自分の身のまわりのことはまったくできない。完全にベッドか椅子で過ごす。

パフォーマンスステータス:[国立がん研究センター がん情報サービス 一般の方へ] (ganjoho.jp)

この指標は主に癌の積極的治療期に、化学療法や抗がん剤治療がどの程度患者さんの全身状態に影響しているのかを判断するために用いられています。PSは臨床治療と論理的につじつまの合ったものなので、お願いして変更できる性質のものではありません。
障害年金の一般状態区分とは似てはいますが異なるものですので、障害年金についてのコミュニケーションを医師と取るときは混同しないように心がけましょう。

がんによる障害年金の認定ポイント

がん(悪性新生物)は全身のほとんどの臓器・血液や皮膚にまでに発生するため、障害の状況や病状も様々です。また、障害の状態や衰弱が、ガンそのものによって引き起こされたものなのか、それとも治療の結果として引き起こされたものなのかの判断がつきにくいものでもあります。
上記のことから、癌に対しての障害認定は「総合的に判断する」と記されており、かなり曖昧な部分も残されています。

癌の障害認定については早めにプロに頼り、医師とコミュニケーションを取りながら受給できるかどうかを確認することがおすすめです。

がんで障害年金を受給した実例

肺がんで障害厚生年金3級を受給した実例(50代 男性)

54歳でステージⅣの肺がんと診断された男性の受給例です。ご本人が外出困難な中、奥様からご相談を頂き障害厚生年金3級を受給するに至りました。

肺がんで障害厚生年金3級を受給した事例(50代 男性)

膀胱がんで障害共生年金3級を受給した実例(50代 男性)

52歳で膀胱がんと診断された男性の受給例です。長期療養のために復職が不透明となり、障害共生年金3級を受給するに至りました。

膀胱がんで障害共済年金3級を受給した事例(50代 男性)

胃がんで障害厚生年金1級を受給した事例(30代 男性)

30代の若さで余命3ヶ月の末期胃がんと診断された男性の受給例です。
障害厚生年金1級並びに障害基礎年金1級の支給決定がおりました。

胃がんで障害厚生年金1級を受給した事例(30代 男性)

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回は癌(悪性新生物)の障害年金について解説致しました。がんは障害年金認定を受ける上で曖昧な部分が多く、総合的な判断が必要とされるため、医師とのコミュニケーションが欠かせません。迷った際はぜひ多摩・八王子障害年金相談センターにご相談ください。

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小野 勝俊

初めまして、多摩・八王子障害年金相談センターを運営する「多摩ヒューマンサポート社会保険労務士事務所」の代表 小野勝俊と申します。 当事務所に相談することで、お客様の悩みが少しでも解決するよう私が精一杯サポート致します。 障害年金を受給し、新しい未来が築くことができるように一緒に頑張っていきましょう。