呼吸器疾患とは、肺や気管支、気管などの呼吸器に炎症や感染、損傷などが起こる病気の総称です。呼吸器疾患には、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺結核、じん肺、間質性肺炎、肺がんなどがあります。呼吸器疾患は、呼吸困難や咳、痰、喘鳴などの症状を引き起こし、重症化すると呼吸不全や心不全などの合併症を起こすことがあります。
呼吸器疾患によって障害を受けた場合、障害年金や身体障害者手帳の申請ができる場合があります。
この記事では、呼吸器疾患での障害年金と認定基準、実際の受給事例も合わせて解説したいと思います。
喘息などの呼吸器疾患による障害等級認定基準について
呼吸器疾患による障害の程度は、自覚症状、他覚所見、検査成績(胸部X線所見、動脈血ガス分析値など)、一般状態、治療や病状の経過、年齢、合併症の有無や程度、具体的な日常生活状況などにより総合的に認定されます。
呼吸器疾患による障害の認定の対象は、そのほとんどが慢性呼吸不全によるものであり、特別な取扱いを要する呼吸器疾患として肺結核、じん肺、気管支喘息があげられます。
呼吸器疾患による障害の等級は、障害年金と身体障害者手帳では異なります。障害年金の等級は、1級、2級、3級の3つがあります。身体障害者手帳の等級は、1級から6級までの6つがあります。障害年金の等級は、障害の程度に応じて支給額が異なります。身体障害者手帳の等級は、福祉サービスの利用範囲や内容が異なります。
呼吸器疾患による障害の等級の認定基準は、厚生労働省が定めた「障害等級の認定基準」によって決まります。この認定基準は、呼吸器疾患の種類や症状によって細かく分類されています。以下に、代表的な呼吸器疾患の障害等級の認定基準を示します。
喘息
喘息とは、気管支が過敏に反応して狭くなり、呼吸困難や喘鳴などの発作を起こす病気です。喘息の障害の程度は、発作の頻度や重症度、薬物療法の効果、日常生活や労働の制限度などにより認定されます。喘息の障害等級の認定基準は、以下のとおりです。
1級 | 発作が月に10回以上あり、入院や点滴静注などの強力な治療を必要とするもので、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 発作が月に5回以上あり、吸入ステロイドや経口ステロイドなどの強力な治療を必要とするもので、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 発作が月に2回以上あり、吸入ステロイドや経口ステロイドなどの強力な治療を必要とするもので、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの |
慢性閉塞性肺疾患(COPD)
COPDとは、肺気腫や慢性気管支炎などの病気が合併して、気道が狭くなり、呼吸が困難になる病気です。COPDの障害の程度は、呼吸困難の程度、肺機能検査の値、動脈血ガス分析値、日常生活や労働の制限度などにより認定されます。COPDの障害等級の認定基準は、以下のとおりです。
1級 | 呼吸困難が安静時にもあり、予測肺活量1秒率が30%未満で、動脈血O2分圧が60mmHg以下であるもので、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 呼吸困難が軽い労作時にあり、予測肺活量1秒率が50%未満で、動脈血O2分圧が70mmHg以下であるもので、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 呼吸困難が中等度の労作時にあり、予測肺活量1秒率が70%未満で、動脈血O2分圧が80mmHg以下であるもので、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの |
肺結核
肺結核は、結核菌による肺の感染症です。咳や痰、発熱、体重減少などの症状があります。人から人に空気感染します。感染しても発病しないことが多いですが、免疫力が低下すると発病することがあります。抗結核薬で治療します
肺結核による障害の等級の判断基準は、以下のとおりです。
1級 | 認定の時期前6ヶ月以内に常時排菌があり、胸部X線所見が日本結核病学会の分類のI型(広汎空洞型)やII型(非広汎空洞型)、III型(不安定非空洞型)で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの |
2級 | 認定の時期前6ヶ月以内に排菌がなく、胸部X線所見が日本結核病学会の分類のI型やII型、III型で病巣の拡がりが3(大)であるもので、かつ日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの。または、認定の時期前6ヶ月以内に排菌があり、胸部X線所見が日本結核病学会の分類のIII型で病巣の拡がりが1(小)や2(中)であるもので、かつ日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの |
3級 | 認定の時期前6ヶ月以内に排菌がなく、胸部X線所見が日本結核病学会の分類のI型やII型、III型で、積極的な抗結核薬による化学療法を施行しているもので、かつ労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とするもの。または、認定の時期前6ヶ月以内に排菌があり、胸部X線所見が日本結核病学会の分類のIV型であるもので、かつ労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とするもの |
呼吸不全
呼吸不全とは、原因のいかんを問わず、動脈血ガス分析値、特に動脈血O2分圧と動脈血CO2分圧が異常値であり、そのために生体が正常な機能を営み得なくなった状態をいいます。呼吸不全の障害の程度は、自覚症状や他覚所見、動脈血ガス分析値や予測肺活量1秒率などの検査成績、一般状態、具体的な日常生活状況などにより総合的に認定されます。呼吸不全の障害等級の認定基準は、以下のとおりです。
1級 | 呼吸困難が安静時にもあり、予測肺活量1秒率が30%未満で、動脈血O2分圧が60mmHg以下であるもので、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 呼吸困難が軽い労作時にあり、予測肺活量1秒率が50%未満で、動脈血O2分圧が70mmHg以下であるもので、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 呼吸困難が中等度の労作時にあり、予測肺活量1秒率が70%未満で、動脈血O2分圧が80mmHg以下であるもので、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの |
じん肺
じん肺とは、石綿や石灰などの粉塵を長期間にわたって吸入することで、肺に炎症や線維化が起こる病気です。じん肺の障害の程度は、胸部X線所見、呼吸不全の程度、合併症の有無や程度、日常生活状況などにより総合的に認定されます。じん肺の障害等級の認定基準は、以下のとおりです。
1級 | 胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの |
2級 | 胸部X線所見がじん肺法の分類の第4型であり、大陰影の大きさが1側の肺野の1/3以上のもので、かつ日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの |
3級 | 胸部X線所見がじん肺法の分類の第3型のもので、かつ労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とするもの |
間質性肺炎
間質性肺炎とは、肺の間質と呼ばれる組織に炎症や線維化が起こる病気です。間質性肺炎の原因は、自己免疫疾患や薬剤、感染症、職業性など様々です。間質性肺炎の障害の程度は、呼吸困難の程度、肺機能検査の値、動脈血ガス分析値、日常生活や労働の制限度などにより認定されます。間質性肺炎の障害等級の認定基準は、以下のとおりです。
1級 | 呼吸困難が安静時にもあり、予測肺活量1秒率が30%未満で、動脈血O2分圧が60mmHg以下であるもので、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの |
2級 | 呼吸困難が軽い労作時にあり、予測肺活量1秒率が50%未満で、動脈血O2分圧が70mmHg以下であるもので、日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とする程度のもの |
3級 | 呼吸困難が中等度の労作時にあり、予測肺活量1秒率が70%未満で、動脈血O2分圧が80mmHg以下であるもので、労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とする程度のもの |
肺がん
肺がんとは、肺の細胞が異常に増殖してできる悪性腫瘍です。肺がんの原因は、喫煙や受動喫煙、大気汚染、放射線、遺伝などが関係しています。肺がんの障害の程度は、病期や転移の有無、治療の効果や副作用、日常生活や労働の制限度などにより認定されます。肺がんの障害等級の認定基準は、以下のとおりです。
1級 | 肺がんの病期がⅣ期であり、化学療法や放射線療法などの治療が効果がなく、かつ長期にわたる高度の安静と常時の介護を必要とするもの |
2級 | 肺がんの病期がⅢ期であり、化学療法や放射線療法などの治療が効果が不十分で、かつ日常生活が著しい制限を受けるか又は日常生活に著しい制限を加えることを必要とするもの |
3級 | 肺がんの病期がⅡ期であり、手術や化学療法や放射線療法などの治療が効果があるが、かつ労働が制限を受けるか又は労働に制限を加えることを必要とするもの |
気管支喘息で障害基礎年金2級を受給した事例(40代 女性)
概要
40代 女性
病名:気管支喘息
結果:障害基礎年金2級
依頼者の状況
Sさんは現在48歳で、30代後半から徐々に呼吸が浅くなってきてしまい、その後2、3年経っても症状が改善されなかったため、自宅近くの病院を受診し精密検査を受けた結果、気管支喘息と診断されました。その後、現在に至るまで毎日朝と夕方、合計4回ステロイド薬であるフルタイドの吸入を行いながら服薬療法を続けております。
症状としては1週間に1、2回ほど発作が起き、15段程の階段を上るのに2~3段毎に1度止まって10分ほど呼吸を整えてからではないと上ることができず、階段を上るのに時間がかかってしまい、とても苦労しています。
そのような日々を過ごす中でインターネットを検索した際に障害年金の制度を知り、自分も受給できるのではないかと思い多摩・八王子障害年金相談センターに問い合わせをしました。
受任から受給まで
ご本人と面談しヒヤリングした結果、現在も階段は7、8段ほどゆっくり上ったとしても息が上がってしまい歩いて行ける範囲がとても限られており、外出時も歩行する際は平らな道でもゆっくり歩かざるをえず、短い距離でないと歩けない状況でした。
また家事についても掃除や洗濯などをすると部屋に塵や埃がでてしまい発作が起きてしまうため、家事の大部分を夫がサポートしてくれているとのことでした。
そのため掃除や洗濯などの家事や買い物しに外出することなど基本的な日常生活に障害の影響が及ぼしているものと判断できたため障害年金の受給できる可能性がある旨を伝え、書類を揃えて申請した結果、障害基礎年金2級を受給するに至りました。
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まとめ
いかがでしたでしょうか?
喘息などの呼吸器疾患も障害年金の対象になります。
申請者が自分が障害年金の対象になるかどうか、または受給のための条件を知りたい場合、専門家への相談や適切な書類の提出を通じて、受給の可能性を高めることができます。
喘息などの呼吸器疾患の障害年金のご相談も受けておりますのでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
小野 勝俊
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