糖尿病・腎疾患で働けなくなった時にもらえる障害年金

2016年(平成28)年6月1日から代謝疾患による障害について、従来の障害認定基準が改正されました。糖尿病(1型・2型)について、必要なインスリン治療を行ってもなお、血糖のコントロールが困難な方が、対象となります。

ここからは糖尿病・腎疾患で働けなくなった時に申請する障害年金について詳しく解説させて頂きます。

糖尿病とは

糖尿病は、インスリンというホルモンの不足や作用低下が原因で、血糖値の上昇を抑える働きが低下してしまうため、高血糖が慢性的に続く病気です。重症になると血液中の糖が尿にあふれ出ることで甘い匂いがするためその名がありますが、診断は尿糖ではなく空腹時血糖や75gOGTT(75g経口ブドウ糖負荷試験)などの血液検査によって行われ、糖尿病は、1型糖尿病と2型糖尿病があります。

また、糖尿病は腎不全の原因にもなりますが、糖尿病と腎不全は、いずれも心臓や血管に負担をかけ、大事な血管が傷ついたり、心臓の働きが悪くなったりします。そのため、糖尿病を合併する腎不全の方は、心筋梗塞や脳卒中などの心血管合併症を起こすリスクが高くなります。このリスクをできるだけ少なくするためにも、糖尿病の末期腎不全治療として、腎臓移植も選択肢の1つとなります。

糖尿病の種類

1型糖尿病

主に自己免疫学的機序により、膵臓にあるインスリンを分泌するβ(ベータ)細胞が破壊され、インスリンが出なくなるため慢性高血糖状態となり、糖尿病を発症します。

生活習慣病の一種である2型糖尿病とは全く異なる性質の糖尿病で、急速にβ細胞が破壊され、様々な自己抗体が陽性になります。

抗GAD抗体、抗IA-2抗体、抗インスリン抗体、抗ZnT8抗体などがあります。

2型糖尿病

2型糖尿病は血液中のブドウ糖(血糖)が正常より多くなる病気です。初期の頃は自覚症状がほとんどありませんが、血糖値を高いまま放置すると、徐々に全身の血管や神経が障害され、いろいろな合併症を引き起こします。

2型糖尿病は体質(遺伝)や高カロリー食、高脂肪食、運動不足などが原因と考えられ、その結果、インスリン分泌の量やインスリンの効き具合が低下し、インスリンの作用不足が起こります。

インスリンは、すい臓のβ(ベータ)細胞で作られるホルモンで、血糖値を下げる働きがあります。

2型糖尿病では「インスリンの作用不足」を改善し、血糖値を上手にコントロールすることが大切です。

糖尿病の障害認定基準

1級 身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生活の用を弁ずることを不能ならしめる程度のもの  
2級身体の機能の障害又は長期にわたる安静を必要とする病状 が前各号と同程度以上と認められる状態であって、日常生 活が著しい制限を受けるか、又は日常生活に著しい制限を 加えることを必要とする程度のもの
3級身体の機能に労働が制限を受けるか、又は労働に制限を加えることを必要とする程度の障害を有するもの  

糖尿病で障害年金を申請する場合、原則として以下の条件に該当した場合に「3級」と認定するとされています。

この「3級」は障害厚生年金の対象者、つまりは初診日の段階で厚生年金に加入していた方のみが対象となりますので、初診日が20歳前であったり国民年金加入中であったりする方は糖尿病のみをもって障害年金を受給するのはなかなか難しいと言えるでしょう。

※ただし、以下の条件と比べより重度な状態であると認められた場合には、2級以上と認定される場合も稀にありますので、まずは以下の条件を確認してみてください。

以下の3つの条件を満たすと原則3級と認定されます。

  1. 検査前に90日以上継続してインスリン治療を行っている。
  1. 以下のいずれかに該当する。
    (ア)内因性のインスリン分泌が枯渇している状態で、空腹時またh随時の結成Cペプチド値が0.3ng/mL未満。
    (イ)意識障害により自己回復できない重症低血糖の所見が平均して月1回以上ある。
    (ウ)インスリン治療中に糖尿病ケトアシドーシスまたは高血糖高浸透圧症候群による入院が年1回以上ある。
  1. 一般状態区分表のウまたはイに該当する。

<一般状態区分表>

区分 一般状態
無症状で社会活動ができ、制限を加えることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの 例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず、常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

この一般状態区分表は診断書の中に記載されており、糖尿病が日常生活・就労に与える支障を判断する項目として、重視されています。

一般状態区分表でエやオに該当し、それを裏付ける所見や検査数値なども併記されている場合には3級よりも上位等級に該当する場合もあります。

合併症がある場合には、障害認定基準が違います

糖尿病は合併症として様々な症状につながる可能性をはらんでいます。

合併症がある場合、その症状が出ている部位に合った診断書を使用します。

それに合わせて、認定基準も変わってきます。

合併症認定基準
糖尿病性網膜症による眼の障害眼の障害の認定基準
糖尿病性壊疽による運動障害、神経障害肢体の障害の認定基準
糖尿病性腎症(人工透析等)腎疾患による障害の認定基準

糖尿病性腎症とは

糖尿病性腎症は、糖尿病の合併症です。

糖尿病は、発症してから数年〜数十年で発症することが多いといわれています。

糖尿病性腎症の初期は、自覚症状はほとんどありません。

糖尿病性腎症だとは気づかずに普通に生活できることが多いです。

糖尿病性腎症が進行して第3〜4期に入ってくると、徐々に症状が出現しはじめます。

主な症状は尿が出にくくなることです。

これは腎臓で老廃物の除去や尿の生成ができなくなるからです。

他には足のむくみ・息切れ・胸の痛み・食欲の低下などが起こります。 第4〜5期に入ってくると、尿はほとんど出ず、息切れなどの心不全症状があらわれます。

また、尿毒症とも呼ばれる症状が出現し、吐き気がしたりかゆみが止まらなかったり、手足がしびれてきたりします。

ここまでくると人工透析療法が必要な状態です。

糖尿病性腎症は腎疾患として認定

糖尿病の認定は、血糖のコントロール状態そのものの認定もありますが、多くは糖尿病合併症に対する認定です。

糖尿病性腎症を合併したものによる障害の程度は、「腎疾患による障害」の認定要領により認定されます。

腎疾患による障害年金の対象は、ほとんどが慢性腎不全に対する認定です。腎機能障害が持続的に徐々に進行し、生体が正常に維持できなくなった状態をいいます。

糖尿病性腎症などの腎疾患による障害の程度は、自覚症状や検査成績、人工透析療法の実施状況などを総合的に判断し認定されます。

腎疾患の障害認定基準

※上記記載の「糖尿病の認定基準」の等級別表と同じ

認定要領

慢性腎不全の検査項目及び異常値の一部を示すと次のとおりである。自覚症状、他覚所見、検査成績、一般状態、人工透析療法、日常生活状況等により、総合的に認定されます。

区分検査項目単位軽度異常中度異常高度異常
内因性クレアチニン クリアランスml/分20以上 30未満10以上 20未満10未満
血清クレアチニンml/dl3以上5未満5以上8未満8以上

<一般状態区分表>

区分 一 般 状 態
無症状で社会活動ができ、制限を加えることなく、発病前と同等にふるまえるもの
軽度の症状があり、肉体労働は制限を受けるが、歩行、軽労働や座業はできるもの           例えば、軽い家事、事務など
歩行や身のまわりのことはできるが、時に少し介助が必要なこともあり、軽労働はできないが、
日中の50%以上は起居しているもの
身のまわりのある程度のことはできるが、しばしば介助が必要で、日中の50%以上は就床しており、
自力では屋外への外出等がほぼ不可能となったもの
身のまわりのこともできず常に介助を必要とし、終日就床を強いられ、活動の範囲がおおむねベッド周辺に限られるもの

各等級に該当すると認められるものについては以下のとおりです。

等級  障害の程度
1級慢性腎不全の検査成績が高度を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のオに該当するもの
2級慢性腎不全の検査成績が中等度又は高度異常を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のエ又はウに該当するもの、人工透析療法施行中のもの
3級慢性腎不全の検査成績が軽度、中等度又は高度異常を1つ以上示すもので、かつ一般状態区分表のウ又はイに該当するもの

人工透析療法の取扱

人工透析療法施行中のものは、2級と認定されます。

なお、主要症状、人工透析療法施行中の検査成績、長期透析による合併症の有無とその程度、具体的な日常生活状況等により、さらに上級等級に認定されます。

障害の程度を認定する時期は、人工透析療法を初めて受けた日から起算して3カ月を経過した日とする(初診日から起算して1年6月を超える場合を除く。)

腎臓移植の取扱

術後の症状、治療経過、検査成績及び予後等を十分に考慮して総合的に認定されます。

障害年金を受給している者が腎臓移植を受けた場合、臓器が生着し、安定的に機能するまでの間を考慮して術後1年間は従前の等級とします。

糖尿病・腎疾患で障害年金を申請する際の注意点

ここからは、糖尿病での申請の時に特に注意して頂きたいことをご紹介いたします。

治療内容は詳細に記載する

治療の内容はできるだけ詳細に記載します。

インスリンによる治療を行っているのであれば、いつごろから行っているのか、注射ペースはどれくらいなのか、副作用(震えや眠気などの低血糖による症状を含む)などを書くと良いでしょう。

また、医師から食事を摂る上でどのような指導を受けているのか、運動はどの程度行っているのかなどを詳細に記載し、その食事療法や運動療法の結果として検査数値は改善しているのか、改善していないのか等をしっかりと記載すると良いでしょう。

日常生活における支障や困っていることを詳細に書く

糖尿病の症状やインスリン注射による副作用が、日常生活や就労にどのような支障を与えているかを具体的に記載しましょう。

例えば、「疲労感や倦怠感から仕事を休むことが増えた」等の事実があれば、記載しましょう。

診断書と整合性をつけながら記載する

最後に最も重要なこと。それは、診断書との整合性です。

例えば診断書の一般状態区分表がイになっている方が、病歴・就労状況等申立書に「一日の半分以上起きていられない」と書いたとします。

おそらく、病歴・就労状況等申立書に書いた内容は、審査に反映されないでしょう。なので、診断書の内容と病歴・就労状況等申立書の内容を照らし合わせて、しっかりと確認する必要があります。

実際に日常生活に起こっている支障と診断書の記載内容との間に相違がある場合には、診断書を作成した医師に相談する等の対応が必要になるでしょう。

糖尿病・腎疾患の申請は何よりも初診日が重要

糖尿病は発症し初めて医療機関に受診してから、障害年金の基準に該当する症状に至るまでの間に相当程度の時間がかかります。

そのため、いざ障害年金の申請を行おうと考えた時に、すでに医療機関がカルテを廃棄していたり、医療機関が廃業していたりして、初診日を証明できないということも多くあります。

また、1型糖尿病の場合には若年期に発症される方も多く、20歳を迎えて障害年金の申請を行えるようになった時点で、初診の医療機関がカルテを廃棄していたり、最悪の場合には廃院していたりして、初診日を証明できないということも起こりえます。

初診日が証明できないがために障害年金を受給できないという事態を避けるためにも、糖尿病だと診断され食事療法や運動療法等を始めた時点で、初診日の証明をできる書類を取得しておくと良いでしょう。

しかし、障害年金の申請に向け不安な事もあるかと思います。

そんな時は、障害年金の専門家がいる多摩・八王子障害年金相談センターへ是非お問合せください。

多摩・八王子障害年金相談センターで面談・ヒアリング

多摩・八王子障害年金相談センターにて障害年金の申請を行うにあたり、まずは事務所までご来所頂き、これまでの病気の通院履歴はじめ日常生活状況や就労状況等について、十分なヒアリングを行います。

病気が重く外出ができないため来所できない方など必要に応じては、出張相談を承っております(遠方の場合には別途交通費などを頂く場合があります。)

また、定期的に各地で無料障害年金相談会を開催していますので、お時間の合う方はそちらをご利用していただいても結構です。

初回面談は1時間前後で、初回面談料はホームページ記載通り無料ですので、ご安心下さい。

面談当日は、発病時から現在までのご病状を伺いながら障害年金の制度や申請手続きの流れなどをご説明させて頂きます。当センターに相談することで、無事に障害年金が受給できるように精一杯サポートさせて頂きますので一緒に頑張っていきましょう。

事務所概要

名 称多摩・八王子 障害年金相談センター 運営:多摩ヒューマンサポート社会保険労務士事務所  
所 長社会保険労務士 小野 勝俊
住 所〒192-0084 東京都八王子市三崎町4-11 トーネンビル5F
電話番号042-683-0765

糖尿病・腎疾患の受給事例のご紹介

こちらでは、糖尿病・腎疾患の相談者様が当センターに相談して障害年金を受給できた実際の受給事例を紹介しております。

ご自身に近い受給事例を見て頂くことで、申請のサポートを依頼しようか迷われている方は安心して相談して頂けるものと考えますので興味のある方は受給事例を是非ご覧になってみて下さい。

尚、個人情報保護の観点から氏名や住所などは伏せて掲載させて頂いております。

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小野 勝俊

初めまして、多摩・八王子障害年金相談センターを運営する「多摩ヒューマンサポート社会保険労務士事務所」の代表 小野勝俊と申します。 当事務所に相談することで、お客様の悩みが少しでも解決するよう私が精一杯サポート致します。 障害年金を受給し、新しい未来が築くことができるように一緒に頑張っていきましょう。