脊髄小脳変性症とは、脳の一部である小脳や脊髄の細胞が徐々に変性していく病気の総称です。この病気にはさまざまな種類があり、原因や遺伝の有無も異なります。脊髄小脳変性症の患者さんは、全国で約3万人以上いると推定されています。
この記事では、脊髄小脳変性症の症状や原因についてと実際に脊髄小脳変性症で障害年金を受給した事例を紹介してみたいと思います。
脊髄小脳変性症の症状とは
脊髄小脳変性症の主な症状は、運動失調と呼ばれるものです。運動失調とは、動かすことはできるのに、上手に動かすことができないという症状です。具体的には、立ったり歩いたりするときにふらつく、手が震える、ろれつが回らない、物が二重に見えるなどの症状があります。これらの症状は、小脳が体のバランスや動作の調整をする機能に障害が起こっているために生じます。
脊髄小脳変性症の症状は、病気の種類や進行度によって異なります。また、運動失調以外にも、足のつっぱり、起立性低血圧、けいれん、筋の萎縮など、さまざまな症状が現れることがあります。これらの症状は、脊髄や脳幹などの他の神経組織にも変性が起こっているために生じます。
脊髄小脳変性症の診断は、症状や家族歴、画像検査(CTやMRIなど)などによって行われます。遺伝性の病気の場合は、遺伝子検査も行われることがあります。遺伝子検査は、病気の原因となる遺伝子の変異を調べる検査です。遺伝子検査は、病気の種類や予後を知るために有用ですが、必ずしも必要な検査ではありません。遺伝子検査を受けるかどうかは、患者さんやご家族の判断によります。
脊髄小脳変性症は、進行性の病気であり、症状は徐々に悪化していきます。しかし、病気の進行は個人差が大きく、病気の種類によっても異なります。一般的には、遺伝性の病気の方が非遺伝性の病気よりも進行が早いと言われています。脊髄小脳変性症の予後は、病気の種類や発症年齢、合併症の有無などによって変わります。脊髄小脳変性症の患者さんは、症状に応じた適切な治療やケアを受けることで、できるだけ長く自立した生活を送ることができます。
脊髄小脳変性症は、まだ原因や治療法が完全には解明されていない病気です。しかし、近年では、遺伝子や細胞の研究が進み、病気のメカニズムや新しい治療法の開発に向けた研究が行われています。脊髄小脳変性症の研究には、患者さんやご家族のご協力が不可欠です。脊髄小脳変性症の患者さんやご家族は、医療機関や患者会などと連携して、病気の理解や情報交換、支援活動などに参加することができます。脊髄小脳変性症に関する正しい知識を持ち、適切な治療やケアを受けることで、患者さんやご家族の生活の質を向上させることができます。
脊髄小脳変性症は遺伝する?種類と原因について
脊髄小脳変性症の原因は、大きく分けて「遺伝性」と「非遺伝性」の2つに分類されます。遺伝性の場合は、神経変性の原因となる遺伝子の変異があります。非遺伝性の場合は、はっきりとした原因は分かっていませんが、感染症、中毒、腫瘍、栄養素の欠乏、奇形、血管障害、自己免疫性疾患などが関係している可能性があります。
遺伝性の脊髄小脳変性症には、さらに細かく分類されるものがあります。代表的なものとして、以下のようなものがあります。
- SCA3(マシャド・ジョセフ病):ATXN3遺伝子の変異が原因で、ふらつきが目立つ病気です。
- SCA6:CACNA1A遺伝子の変異が原因で、両足が麻痺して動かしにくくなったり、物が二重に見えたりする病気です。
- 歯状核赤核淡蒼球ルイ体委縮症(DRPLA):ATN1遺伝子の変異が原因で、けいれんや舞踏病などの病気です。
非遺伝性の脊髄小脳変性症には、以下のようなものがあります。
- 皮質性小脳萎縮症:小脳の皮質が萎縮する病気で、進行が遅く高齢まで自立した生活を送ることができます。
- 多系統萎縮症(MSA):小脳だけでなく、脳幹や脊髄などの他の神経組織も変性する病気で、運動失調に加えて、パーキンソン症候群や自律神経症状などが生じます。進行が比較的早く、発症後平均約5年で車椅子使用、約8年で臥床状態となるとの報告があります。
脊髄小脳変性症の治療法は?
脊髄小脳変性症の治療法は、現在のところ、根本的な治療法はありません。症状を和らげるための対症療法が行われます。対症療法とは、病気の原因ではなく、症状に対して行う治療法です。脊髄小脳変性症の対症療法には、リハビリテーションや薬物療法があります。
リハビリテーションは、バランスや運動の練習を行うことで、運動失調を改善することを目的とします。リハビリテーションは、病院や訪問看護などの専門家の指導のもとで行われます。リハビリテーションでは、運動の練習だけでなく、日常生活で転倒しないための方法や、生活の質を向上させるための工夫なども教えられます。
薬物療法は、甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)製剤や抗パーキンソン薬などを使って、運動失調やパーキンソン症候群などの症状を改善することを目的とします。TRH製剤は、セレジストやタルチレリンなどの商品名で販売されています。TRHは、中枢神経系に多様な作用を持つ神経伝達物質で、小脳運動失調の改善作用が確認されています2。抗パーキンソン薬は、ドパミンという神経伝達物質の不足によって起こるパーキンソン症候群の症状を改善する薬です。パーキンソン症候群の症状とは、手足の震えやこわばり、動きの遅さなどです。
脊髄小脳変性症の治療法は、病気の種類や進行度によって異なります。また、個人差も大きく、効果や副作用も異なります。脊髄小脳変性症の治療法は、医師や薬剤師などの専門家と相談しながら、患者さんやご家族の希望や状態に合わせて決めることが大切です。
脊髄小脳変性症になったら注意すること
脊髄小脳変性症になったら注意することは、以下のようなことが挙げられます。
転倒やけがの予防のために、安全な環境づくりや補助具の使用をする
脊髄小脳変性症ではふらつきがよく見られるため、転倒に注意が必要です。特に、歩き出しや方向転換の際に転びやすくなるので、普段使う椅子の近くや曲がり角に手すりを設けるなどして対策するとよいでしょう。適度に体を動かすことも大切ですが、無理をしないことや、歩行器や杖などの補助具を使用することも必要です。また、床や絨毯が滑りやすくないか、家具や電気コードなどがつまずきの原因にならないかなど、部屋の中の安全性も確認しましょう。
嚥下障害や誤嚥性肺炎の予防のために、食事形態や姿勢に注意をする
脊髄小脳変性症では、症状の進行によって、食べ物や飲み物を飲み込むのが困難になることがあります。これを嚥下障害と言います。嚥下障害があると、食べ物や飲み物が気管に入ってしまい、肺炎を起こす危険があります。これを誤嚥性肺炎と言います。嚥下障害や誤嚥性肺炎を予防するためには、食事のときに正しい姿勢をとることや、食べ物や飲み物の量や硬さを調節することが重要です3。また、食事の前後に口腔ケアを行うことや、食事中に咳き込んだり、声がかすれたりしたら、医師や栄養士などに相談することも必要です。
精神的な苦痛や孤立感の予防のために、コミュニケーションや社会参加をする
脊髄小脳変性症では、運動失調や言語障害などによって、他者とのコミュニケーションが困難になることがあります。これによって、患者さんやご家族は、精神的な苦痛や孤立感を感じることがあります。精神的な苦痛や孤立感を予防するためには、コミュニケーションや社会参加をすることが大切です。コミュニケーションでは、言葉だけでなく、表情や身振り手振りなども活用しましょう。また、社会参加では、趣味やレクリエーションなど、自分の好きなことやできることを見つけて、楽しみましょう。医療機関や患者会などと連携して、病気の理解や情報交換、支援活動などに参加することも有効です。
脊髄小脳変性症で障害厚生年金3級を受給した事例(50代 男性)
50代 男性
病名:脊髄小脳変性症(指定難病)
結果:障害厚生年金3級
依頼者の状況
Wさんは、現在57歳で職場で同僚と会話している際に言葉の呂律が回らなくなったり、階段を下りる際にバランスを崩すようになりました。
また日常生活においても外出する際に玄関先で靴を立ったまま履こうとする時や自転車に乗っている際に突然バランスを崩し転倒したりすることが多くなりました。
そのため仕事を続けることが困難となり仕事を辞め今後どのように日常生活を過していけばよいか悩んでいました。
その様子を見ていた妻が病院を受診するように言われため近くの病院を受診し精密検査を受けた結果、歩行時のふらつきや、手の震え、ろれつが回らない等を症状とする神経の指定難病である脊髄小脳変性症と診断されました。
その後も定期的に病院に通い治療を続けていましたが、症状は改善せず現在は右手が震えてコップの飲み物を零してしまったり箸を使って食べ物を口に運べなくなったりするなど月日が経過するごとに症状が悪くなっています。
そのような日々を過す中でインターネットで障害年金の制度を知り、自分の障害で障害年金が受給できるかどうか相談したいと思い多摩・八王子障害年金相談センターに問い合わせをしました。
受任から受給まで
ご本人と面談し病状をヒヤリングしたところ、発病の原因として脊髄小脳変性症は遺伝性のあるものと遺伝性のないものに分けられ、Wさんは母親や叔父さんも同様の病気を患っていることから遺伝性であるものと判りました。
そして現在の病状も治療を続けているものの右手が震えるため文字を綺麗に書けなかったり階段を上り下りする際には手すりにつかまるか壁に手を添えなければ階段を上ったり下りることができず運動機能に障害がありました。
また主治医からも脊髄小脳変性症は指定難病の一つで現在の医学では病気の完治は難しく薬もあくまで症状の進行を遅らせるに過ぎないと言われており今後の病状の回復は困難な状況といえることからも障害年金を受給できる可能性がある旨を伝えました。
その後、申請書類を揃えて申請した結果、障害厚生年金3級を受給するに至りました。
まとめ
いかがでしたでしょうか?
脊髄小脳変性症になった場合、自分が障害年金の対象になるかどうか、または受給のための条件を知りたい場合は専門家への相談や適切な書類の提出を通じて、受給の可能性を高めることができます。
脊髄小脳変性症の障害年金のご相談も受けておりますのでお悩みの方はお気軽にご相談ください。
小野 勝俊
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